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5.302019
「ホテル・旅館等」で外国人を雇いたい場合
訪日外国人旅行者は年々増加しており、2018年には約3,120万人の外国人旅行者が日本を訪れました。
ホテル・旅館等ではこれに対応し、さらなる需要獲得のため、外国人材を雇用しようという企業様が多く見られます。
それではどのような外国人をどのような業務内容で雇用できるかを見ていきましょう。
ホテル・旅館等の業務内容別
ホテル・旅館等には様々な仕事がありますが、就労できる業務と就労できない業務があります。また就労できる業務でも不許可になる場合があるので注意が必要です。
具体的に例を挙げて見ていきましょう。
宿泊部門の場合
宿泊部門の場合、主に以下の業務が考えられます。
・フロント業務
・ポーター業務
・ハウスキーピング業務
これらの業務のうち、フロント業務では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」での就労が認められる可能性があります。
ただし、当該ホテル・旅館等において外国人観光客が多く利用しているなど、外国人労働者が外国語を用いた業務をする必要性と一定の業務量が必要となります。(外国人ならどこの国でもよいのではなく、外国人観光客が話す言語の外国人労働者である必要があります。)
ポーター業務、ハウスキーピング業務については、「 技術・人文知識・国際業務」での就労は認められません。
飲食部門
飲食部門の場合、主に以下の業務が考えられます。
・調理業務
・ウエイター、ウエイトレス業務
これらの業務では 「 技術・人文知識・国際業務」での就労は認められません。
営業部門
営業部門の場合、主に以下の業務が考えられます。
・企業や団体に対する営業業務
・企画・マーケティング業務
・広報業務
これらの業務では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」での就労が認められる可能性があります。
管理部門
管理部門の場合、主に以下の業務が考えられます。
・総務業務
・経理業務
・人事業務
これらの業務では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」での就労が認められる可能性があります。
実際に許可された事例と不許可になった事例
それでは実際にどんな事例が許可されたか、不許可となってしまったかを見ていきましょう。
<許可された事例>
①母国の大学の観光学科を卒業し、外国人観光客が多く利用する日本のホテルと月22万円で雇用契約を結び、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客担当としてホテル内の施設案内業務に従事するもの。
②母国の大学を卒業し、母国からの観光客が多く利用する日本の旅館と月20万円で雇用契約を結び、集客拡大のための母国の旅行会社との交渉に当たっての通訳・翻訳業務、従業員に対する外国語指導の業務等に従事するもの。
③ 日本の大学で経済学を専攻して卒業し、日本の空港に隣接するホテルと月25万円で雇用契約を結び、集客拡大のためのマーケティングリサーチ、外国人観光客向けの宣伝媒体(ホームページなど)作成などの広報業務等に従事するもの。
④ 日本の大学で経営学を専攻して卒業し、外国人観光客が多く利用する日本のホテルとの契約に基づき総合職(幹部候補生)として採用された後、2か月間の座学を中心とした研修及び4か月間のフロントやレストランでの接客研修を経て、月30万円の報酬を受けて、外国語を用いたフロント業務、外国人観光客からの要望対応、宿泊プランの企画立案業務等に従事するもの。
⑤ 日本の専門学校で日本語の翻訳・通訳コースを専攻して卒業し、専門士の称号を付与された者が、外国人観光客が多く利用する日本の旅館と月20万円で雇用契約を結び、外国語を用いたフロントでの案内業務、外国語版ホームページの作成、館内案内の多言語表示への対応のための翻訳等の業務等に従事するもの。
⑥ 日本の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、外国人が多くを占めている日本のホテルにおいて、修得した知識を活かしてのフロント業務や、宿泊プランの企画立案等の業務に従事するもの。
⑦海外のホテル・レストランにおいてマネジメント業務に10年間従事していた者が、国際的に知名度の高い日本のホテルとの契約に基づき、月額60万円の報酬を受けてレストランのコンセプトデザイン、宣伝・広報に係る業務に従事するもの。
<不許可になった事例>
①母国で経済学を専攻して卒業した者が、日本のホテルに採用されるとして申請があったが、従事する予定の業務に係る詳細な資料の提出を求めたところ、主たる業務が宿泊客の荷物の運搬および客室の清掃業務であり、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可になった。
②母国で日本語学を専攻して大学を卒業した者が、日本の旅館において、外国人宿泊客の通訳業務を行うとして申請があったが、当該旅館の外国人宿泊客の大半が使用する言語は申請人の母国語と異なっており、申請人が母国語を用いて行う業務に十分な業務量があるとは認められたいことから不許可になった。
③日本で商学を専攻して大学を卒業した者が、新規に設立された日本のホテルに採用されるとして申請があったが、従事しようとする業務の内容が、駐車誘導、レストランにおける配膳・片付けであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとは認められず不許可になった。
④日本で法学を専攻して大学を卒業した者が、日本の旅館との契約に基づき月額15万円の報酬を受けて、フロントでの外国語を用いた予約対応や外国人宿泊客の館内案内等の業務を行うとして申請があったが、申請人と同時期に採用され、同種の業務を行う日本人従業員の報酬が月額20万円であることが判明し、額が異なることについて合理的な理由も認められないことから、報酬について日本人が従事する場合と同等額以上と認められず不許可になった。
⑤日本の専門学校において服飾デザイン学科を卒業し、専門士の称号を付与された者が、 日本の旅館との契約に基づき、フロントでの受付業務を行うとして申請があったが、専門学校における専攻科目と従事しようとする業務との間に関連性が認められないことから不許可になった。
⑥日本の専門学校においてホテルサービスやビジネス実務を専攻し、専門士の称号を付与された者が、 日本のホテルとの契約に基づき、フロント業務を行うとして申請があったが、提出された資料から採用後最初の2年間は実務研修として専らレストランでの配膳や客室の清掃に従事する予定であることが判明したところ、これらの「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当しない業務が大半を占めることとなるため不許可となった。
以上のように、在留資格「技術・人文知識・国際業務」では一定水準以上の技術・知識を要する業務であり、大学等で学んだ科目と関連のあるもの、または外国人特有の思考もしくは感受性が必要とする業務でなければなりません。
また日本人が従事する場合における報酬と同等額以上の報酬を受ける必要があります。
レストランなどで外国人を雇用したい場合
上記のようにレストランなどで「技術・人文知識・国際業務」で雇用することができない場合は、「永住者」、「永住者の配偶者等」、「日本人の配偶者等」、「定住者」のような身分系の在留資格をもつ外国人を雇用することができます。
また週28時間以内などいう制限はありますが、「資格外活動許可」が認められた「留学生」や「家族滞在」の在留資格を持つ外国人を雇用することもできます。
さらに2019年4月から始まった在留資格「特定技能」では、「フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供」業務に従事することができます。
また、在留資格「技能実習」宿泊業では、これまで1年しか認められていませんでしたが、2年目、3年目もできるようになるよう制度が改正されると発表があり、2019年7月頃から開始される予定です。
いかがでしたでしょうか。
ホテル・旅館等での人手不足、また外国人労働者の採用による更なる需要の獲得に向けて参考にしていただければと思います。